▲乾燥したシカカイの実。市場にはこのように出される |
インドの天然シャンプーシカカイとは
私がインドに来て、はじめに触れたハーブはヘナでした。
その次に知ったのがこのシカカイです。
インドでテレビを見ていると、シャンプーの宣伝も流れるのですが、必ずといって「いいほどこのシカカイも入っていて、自然派!みたいな映像が流れます。
日本から来た私の目にはそれはなんのことだかまったくわからなかったのですが、インド人ならほとんどの人がこのシカカイのことを知っていて、つい最近まではみんながそれを使っていたようです。
しかし、「それ」って。。。
それが上の鞘のような大きなマメ科の弦植物です。触るとごつごつと堅く、中には大きな黒い豆が入っています。もちろん木になっているときはしっとりやわらかいですが、市場に出回るときは乾燥しています。
天然のサポニン成分が含まれ、水につけてもむと泡が立ちます。
▲VIP ANAN研究所(プネー)のヴィギャシュリ代表
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以前プネーにある成分分析を専門とするラボラトリーの代表の女性にハーブの話をうかがう機会がありました。
そのとき彼女がいっていたのは、最近の科学的なシャンプーには決して体に良いとは思えないような刺激の強いもの、または継続使用することで有毒になりうる成分が多用されていて、それを知る研究員たちは決してそういった合成シャンプーをしようしないといっていました。
私も以前聞いたことがあるのですが、昔は頭皮に毒を塗り殺人をしたとも言われています。それほど頭皮というのは吸収の激しいところなのだそうで、それを聞くとますます頭皮に触れるものは慎重になりますね。
その彼女が教えてくれたのですが、シカカイの効果は成分的にも証明されていて、
その歴史たるや、インド5000年の歴史を記すヴェーダの経典にも解説されていていました。
シカカイの使用方法:
外側に使用されれば、洗浄と収斂作用がある。内的に使用されると、高揚、去たん、嘔吐作用がある。
シカカイの実は、髪の洗浄に広く使用され、これで髪を洗えば、髪が素晴らしく活性化される。
シカカイの実は、また、皮膚病の治療に使用される。
シカカイの実は、髪を健康にし、しなやかにするが、髪の脂を取り除かない。
定期的にシカカイで髪を洗えば、頭皮と髪が清潔になり、フケがなくなる。
シカカイには、活性効果があり、髪の成長を助ける。
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と示されているくらいなのです。
昔はみんな使っていた。。。
▲うちに来ていたアーヤーさん(通い手伝い) |
そして私たちが、その実を手に入れて四苦八苦していると、その頃(もう7年前)うちに来てくれていた、タミルナドゥ出身のアーヤー(通いのお手伝い)さんのリリィさんが見るに見かねてシカカイの使い方を教えてくれました。
▲インド家庭で使われる石版 |
「タミルナドゥのやり方は米のとぎ汁でこのシカカイのエキスを採るのよ。昔はみんなこの実を石版でつぶして髪も体も洗ったものよ。今では誰もやらないけどね。。。」といいながら、、、。
彼女の手つきは本当に手馴れた感じで、どんどん進みました。
あいにく我が家には石版がなかったので、ミキサーを使って作りましたが、今もインド家庭には左のような石版と石の麺棒ならぬ挽き棒があって、日本でも知られるほうれん草のカレーのほうれん草をつぶしてペーストにしたり、岩塩を粉末にしたり、もちろんマサラを作ったりに大変重宝されている重要なキッチン用具です。
やはりこれを使うと人の手を通したぬくもりのせいか、できばえが全然違うんですよね。
タミルナドゥのシカカイ洗髪法を再現

▲シカカイを米のとぎ汁につける

▲火にかけて少し煮込む

▲一晩付ける
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左のコマ送りでわかるとおり、堅いシカカイは水につけて戻します。リリィさんが言うにはタミルナドゥでは米のとぎ汁でするのが昔からのやり方ということでした。
日本でも昔は米のとぎ汁で髪を洗うと良い髪になるといわれていましたものね。うんちくはわかりませんが、どこの国でも良いとされる方法はきっと利にかなっているのでしょうね。
そしてその次に火にかけます。かけずに一晩付けるだけでもかなりエキスが染み出してきますが、彼女は火にかけた方が鞘が柔らかくなって、中の大事なエキスが出てくるということです。
後でわかったことですが、中にある堅くてミキサーで砕くのも大変な黒い豆があるのですが、この中にもっともサポニン成分が多く含まれるそうです。煮たほうが、やはりこれが出やすいのでしょうか。。。
一晩たつとやわらかくなった皮は指でもつぶれるほどになりました。もんで見ると、少しとろみのある何か成分があるであろう液体が出てきました。いかにも髪によさそうです。
一応この工程は水につけるだけでも、それすら飛ばして、はじめから次のミキサーで堅い鞘と水を入れてまわす方法でもあわ立ちは得ることが出来ますが、やはりじっくり漬け込んだ方が髪への効果は違うようです。
無駄なくすべてに使える自然にも人にも優しいシカカイ

▲ミキサーに付けたシカカイを水ごと入れる

▲ミキサーをかける
 ▲念入りにまわすとムースのようになる

▲ざるで漉す

▲エキスが取り除かれ粕が残る
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そして本来なら石版でつぶす部分ですが、近代的にミキサーで代用。
一晩付けてあるとかなりやわらかいので、すぐに液体になります。しかし中の豆はかなり堅い場合もあるので、ガツガツと堅い音がなくなるまで丹念にミキサーします。
しばらくしてふたを取ると、クリームのような泡がたくさん。
このままムースのように髪に塗り洗髪することも出来ますよ。
ただちょっとクズが入っていることがあるので、ムースのように使いたい場合は1回漉してから、またあわ立てる目的でミキサーしなおしたほうがいいかもしれません。この漉して出来た液体がシャンプーとして使われるものです。
そして漉されたクズは入浴剤のようにバスタブに入れればボディーソープのようにも使えます。コットンに包んでバスタブで肌を軽くこすると肌もつるつるですよ。
また我が家ではこのクズで食器洗いをしています。
シカカイは脂物もすっきり落としてくれるので、油ギトギトのフライパンなどにはしばらくクズを置いておくと、すぐに油が切れてピカピカになります。
本当に無駄なく使えるお役立ちハーブです。
しかし、こんな作業も面倒という方にはパウダーになったシカカイもあります。
このパウダーも一晩水につけてエキスをしっかり出した方が効果は高いようですが、忙しいときはパウダーを水で溶いて、すぐに洗髪しても効果は実感できますよ。
そしてシカカイを使うときにこれを注意しないとなりません。
これ、すごく目にしみます。万が一目にはいったら、しばらく目が開けられずかなり痛いです。痛みが引いてもしばらくうさぎのように真っ赤な目でいないとなりません。ご使用の際は目をしかりつぶって絶対に目に入らないように気をつけてください。もし入っても目には害にはなりません。むしろ目にいいくらいかもしれませんが、本当にかなり痛いので注意をしないとなりません。
またシカカイは基本的には誰にも仕える洗浄力をもったハーブですが、まれにアレルギーのある方がいます。またシカカイを使ったら髪がギシギシになってしまったということもあります。こういう方は髪の痛みが激しく、乾燥している可能性もあるようです。シカカイは油分を著しく分解しますので、髪の状態によってシカカイではないハーブにしたり、補う効果のあるオイルや他のハーブが合う場合があります。その配合や調合、自分にあったものを探していくのもまた、楽しみながらできるといいですね。