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satvik Inc.佐藤真紀子のインド植物のお話

第2話・エーラー・エーランダー
トウゴマ(唐胡麻、学名:Ricinus communis)

聖書にも仏典にも登場し、戦闘機にも搭乗したヒマ

ヒマ・トウゴマの葉 仏典の例えに出てくるほど親しみ深く、効果多大な植物のヒマ




ヒマの葉や他の薬草たち ピンダ・スヴェダに使う様々な薬草たち
飛行機の潤滑油にもなったヒマの油

トウゴマ(唐胡麻、学名:Ricinus communis)は、種からヒマシ油をとるので、ヒマ(蓖麻)としても知られています。

このヒマシ油は、最近はダイエットなどで注目を浴びていますが、第二次大戦中には、ムッソリーニが拷問の手段として使ったという話もあるほど強力な下剤です。
数千年前のエジプトの墓からもヒマの種が出土したそうですから、はるか昔から薬として使われていたのでしょうね。
油の中では一番重くどっしりとした性質なので、高度1万メートルの寒さでも使える、飛行機の潤滑油として、戦前は空軍の必需品だったようです。


ヒマの花 ヒマの花
仏典にも登場するヒマとは・・・

仏典の中には伊蘭=イランという名前で登場しますが、これはサンスクリット語のエーランダが訛ったものだと思います。
ヒンディ語ではエーラーとも言われ、葉っぱで作ったお団子を布で包んで治療する、パトラ・ピンダ・スヴェダのことをケララなどでエラ・キジというのも、このエーラーの葉っぱが一番よく使われるからです。
すぐ道ばたに生えていて、インドならどこでもとても手に入りやすい植物です。


仏典の中では、父王を殺してしまった、どうしようもないゴロツキの王子が仏陀に出会い、信仰を持つことですばらしい人に変わります。
これを、伊蘭から栴檀(センダン)が育つと譬えている場面があるのです。
つまり、伊蘭=ヒマは、つまらないものの譬えとして出されているわけですね。 それほどありふれた植物ですが、薬効はとても素晴しいのです。




ヒマの葉のペースト ヒマや他の薬草をペーストにして包み団子を作ります
15メートルにも成長する大樹

栴檀と比較されるほど大きくもなります。普通は2メートルくらいですが、 薬草の本によれば15メートルくらいになるとも書いてあって、ビックリ!
そういえば、聖書の中には、神様が、ヨナという人物のために、ヒマの種からニョキニョキと芽をださせて、休むための木陰を作ったというお話があります。
たしかにヒマは成長も早く、15メートルにもなるとすれば、大きな葉っぱで、よい木陰を作ってくれるでしょうね。


葉っぱには白と赤があり、ほとんど差はありませんが、ラージャニガントウという古典書によれば、白い方はカパを抑制し、赤い方は、消炎作用などもあると書かれています。




ヒマで治療を受ける患者さん ヒマの葉を使った治療を受ける患者さん
リウマチや痛風による痛み治療に使われるヒマ

この葉っぱは、リウマチや痛風による痛みに効果があるので、ペーストにしたものを温めて傷むところに温湿布をするとリウマチなどによる痛みをやわらげてあげることが出来ます。
蒸気を使って箱蒸しの発汗法をする時に、患者さんの背中の下にこの葉っぱを敷いたりもします。
先日、クリニックで蒸気浴にこの葉っぱを使ってみましたが、患者さんの暖まり方が、大きく違いました。ヴァータを下げる効果が大きいのですね。




石垣から届いたヒマの葉 石垣から届いたヒマの葉
日本でも育てられています

今、伊豆の農家でも育ててもらっていますが、本土では寒くて充分に育つのは難しいようです。
当校のピンダ・スヴェダ・コースで使う時には、石垣島から空輸して使いました。高くつきますし、台風の合間を縫うようにして出荷してもらうので、コースに間に合うかどうかもヒヤヒヤしますが、生徒さんには、やはり本物を見て欲しいのです。



薬草を切り分ける 薬草を部位ごとに丁寧に切り分ける
まずは本物を知ろう

私たちの環境の中から似たような薬草を探し出して使うことも大切ですが、そうしたアレンジをする前に、本物の材料で一度やってみると、アレンジする時にも、的をはずすことなく出来るようになると思うからです。

葉っぱは大きいので、石を包んで治療に使ったりもできます。
ペーストにも、ピンダにも、スチームにも、と、幅の広い使い方ができるので、 私たちセラピストにとって、ひとつかみあるだけで、とても安心できる薬草です。


 



 
 

satvik inc. Satvik Inc.佐藤真紀子プロフィール
1962年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、欧州・中東などの滞在を経て、ニュースステーション、サンデーモーニングなどの報道番組に参画。

1998年、師匠であるDr,Sadananda Prabhakar Sardeshmukh博士に出会う。以来数千名の診療に立ち会い臨床経験を重ねる。

日本アーユルヴェーダスクール専門科コース、大阪アーユルヴェーダ研究所薬理学コース卒業。現在も毎年インド各地の病院での研修を続けている。

アーユルヴェーダをとりいれている医療機関、ハタイクリニックでセラピストとして治療にあたる一方、アーユルヴェーダ専門の通訳として会議、セミナーでも活躍。日本アーユルヴェーダ学会の学会誌「シャーンティ・マールガ」の編集長も勤める。
佐藤真紀子